スノーボード6回目
6回目は白馬八方尾根スキー場に2泊3日でスノーボードをしてきた。
4人でスキーに行こうという話を去年からしていたが、全員の日程調整と場所の手配が面倒で、とうとう2月になってしまった。その間に私はスキーではなくてスノーボードの道具を一式買い揃えて、一人ガーラ湯沢で頻繁にグループレッスンに参加していた。ある程度の傾斜がある斜面でもベーシックターンができるようになり、ある程度は仲間について行けるようになった。そこでさっそく2月中に行こうという話になった。交通や宿の手配は旅行会社を使うようにした。最初からこうすれば手間がかからなかったのだ。
さて、当初の計画では、越後湯沢に行こうという話であったが、あいにくと越後湯沢駅周辺のスキー場近くの宿がどこも2月中は満員で取れない。では軽井沢に行こうと探したが、これまた宿が取れない。どうやら東京から簡単に行けるスキー場はもう宿が取れないようだ。とくに土曜日が空いていない。これは平日の3日間に行くか、あるいは木金土や日月火のような2泊3日で、土曜日の宿泊を避けなければならないようだ。それをするぐらいならば、いっそのこともっと交通の便の悪い、しかし大きなスキー場に行ってはどうか。そこで持ち上がったのが白馬八方尾根スキー場だ。とても広い。日本で特に広いスキー場を挙げるとしたらまず出てくるスキー場で、長野オリンピックの会場にもなっている。そして、仲間の一人が主にここで滑っているそうで、とても良いスキー場であるとのことだ。さっそく宿を探すと、とにかく安い上に金土が空いている4人部屋の宿が見つかった。往復新幹線とリフト券2日と2泊で37200円、これに特急バスが片道1800円で。4万円ほどだ。
しかし問題は、その週の水曜日にも職場の同僚とガーラ湯沢に日帰りで行く予定なのだ。これまでの経験から、スノーボードを1日滑ると体の完全な回復には3日間かかる。しかし金曜日からいくのでは1日しか空いていない。
特に問題なのはヒザだ。どうも後ろ足に重心がよっているらしく、かつまだ強く減速するターンをするためか、右ヒザが痛くなる。関節痛の回復はなるべく負担を掛けずに待つしかない。しかし今回時間はない。スノーボードを始めてからというもの、筋肉痛のためにプロテインを毎日飲んでいるが、筋肉痛にはともかく関節痛には効かない。
知り合いのボーダーに相談したところ、グルコサミンのサプリメントを取るとよいという。知り合いのサプリメント好きのボルダーに相談したところ、グルコサミンは効かない。グルコサミンとコンドロイチンとMSMを取るべきだと言われた。そこで、そのようなサプリメントを買ってみた。
グルコサミン、コンドロイチン、MSM、ヒアルロン酸、コラーゲン、これらは関節痛に聞くとサプリメント業界では謳われているが、臨床試験でその効果が認められたことはない。臨床試験で認められているのならば、今頃は整形外科に行けば処方されるようになっている。いずれも臨床試験では偽薬と区別不可能な程度の効果しかなく、かつ副作用も偽薬特別できない程度の効果しかない。つまり偽薬と変わらないということだ。
プラセボというのはとても強い効果を持つ。偽薬を偽薬と知りつつ摂取しても効果を発揮したという研究結果があるぐらいプラセボは実際に効果が出てしまう。残念ながら私はサプリメントを盲信するような疑似科学好きではないが、プラセボの効果を期待しよう。
さて、我々が越後湯沢や軽井沢に行きたかった理由は、圧倒的に東京から行きやすいからだ。1時間から1時間半ほど新幹線に乗るだけでもう現地についてしまう。我々が今回行く白馬八方尾根スキー場は長野にあり、新幹線で83分かけて長野駅まで行った後、特急バスに75分乗らなければならない。幸い、バス停、宿、ゲレンデまでの移動距離はそれほどでもない。
どうせ移動がつかれるので、あまり朝早く出発しても仕方がないと、東京駅を8時頃に出発する新幹線を予約した。しかし一人が財布を家に忘れてしまい、後から合流することになった。
バスも思ったほど苦痛ではなく11時に現地に付き、宿に荷物を預けて、自前の道具一式を持っているスノーボーダーの私ともう一人のスキーヤーはすぐに用意ができた。一式レンタルする出遅れなかった一人はレンタルショップに行ったまま戻ってこない。そこで2人でゲレンデに向かうことにした。
スノーボーダーであるがゆえにソフトブーツを履く私は、スキーヤーのとても歩きづらいスキー用ブーツを着用したスキーヤーをからかいながら、名木山(なきやま)ゲレンデに向かった。まず短い初心者用のコースを一本滑ろうと、さっそくリフト券を引き換えて入手し、名木山第二ペアリフトに乗った。リフトから降りて斜面を見下ろすと、どうにも傾斜が厳しいように見える。本当に初心者用のコースだろうか。あまり深く考えずに滑り降りたところ、ターンはできるが傾斜がきつく、しかも斜面があまりにもいびつでもはやコブのようであった。極めて雪質が悪い。水曜日に全国的に雨が降ったのと、ゴアテックスですら蒸すほどの日差しの強い晴天のためであろう。後で見てみたところ、どうやらこのコースは中級者用コースであったようだ。
長いリフトに乗って上に上がり、滑り降りようとしたが、これまた難しい。大抵の斜面は今まで滑ったことがないほど急で、しかも距離が長い。その上圧雪が悪く天然のコブになっていて、まだショートターンのできない私にはターンができない。しかたがなく斜面の緩い初心者用のコースにそれたが、これまた自動車道路がそのままコースになっているような幅の狭い曲がりくねった林間コースで、スノーボードにはつらい。少なくとも、傾斜面かつコブよりはましだ。
まだ水曜日の疲れも残っているし、2泊3日もするので初日から体に負担を掛けてはならないと判断し、私は1時間以上早めに切り上げて宿に戻った。服を着替え、板の道具の手入れをし、部屋に入って荷物を出していると、仲間たちも切り上げて帰ってきた。
この宿は安いものの、朝夕の食事付きで、温泉もある。あまり期待はしていなかったが、形だけはきれいなジャンクフードよりはマシな食事が出てきた。しかしおかずが冷めているのは安いだけある。なぜか浴衣はプランに含まれておらず、別途200円出してレンタルしなければならない。よくわからないケチりかただ。どうせ浴衣はレンタルするので200円ぐらいなら普通に旅行会社のプランに含めればいいのではないかと思うのだが。
安宿であるので部屋が狭いことは覚悟していたが、まさかの意外なものまで狭かった。それは布団。こんなに狭くて短い布団を私はこの生涯で見たことがない。腕を広げればはみ出すし、だいたい長さは170cmほどしかない。我々の中に背の高い人間がいなかったのは幸いだ。畳に沿って敷いてみると、なるほど、畳一倍分の大きさがある。立って半畳寝て一畳とはこのいひか。
我々は近くにあったマウントという店で酒とツマミを買い求め、ボードゲームに興じて、その日は就寝した。
翌日、相変わらず冷たい安っぽくてまずい鮭の朝食を食べた我々は、さっそくゲレンデに向かった。今日は寒く、雪も降っていたので雪質は多少マシであった。しかし相変わらず天然のコブがいたるところにある。このスキー場の経験者が言うには、パノラマコースが中級者コースだが滑りやすくてよいらしい。我々は早速そこに向かおうとしたが、個々で一つ私に問題が発生した。なぜかトゥと土踏まずが痛むのだ。これではトゥエッジが使えない。どうにもならないのでどうにか木の葉でふもとまで降り、別行動を取ることにした。スキー場のスタッフに話を聞いてみると、咲花(さっか)ゲレンデというのが緩斜面で広くて初心者にも滑りやすいという。だいぶ離れているのでシャトルバスで向かった。
咲花ゲレンデはたしかに滑りやすかった。傾斜は緩く、しかも広い。足への負担も軽いようで傷まない。私は1日ここでスイッチスタンスの練習をした。レギュラースタンスで滑ることによって右ヒザが痛いのであれば、スイッチスタンスを練習することで右ヒザへの負担を軽くしようという目論見だ。レギュラースタンスでは簡単にターンできる緩い斜面だが、スイッチでは最初はターンもままならず、なんとかターンできるようにはなったもののまだぎこちない。しかし、1時間ほど滑っていたところスイッチでもある程度のターンができるようにはなった。時間はすでに15:30、3日目の午前も滑るのであれば体への負担を考えそろそろ切り上げてもいいのだが、やはりこんな広いスキー場に来たのに、山の上に上がらないのは損だ。マップを見れば、ここからリフトで少し高いところに上がり、初級者用のコースで白樺ゲレンデまで戻ることができるようだ。一日緩斜面で練習をしたので戻ることぐらいはできるだろうとリフトに乗った。これは間違いであった。
初心者用のコースというのは、自動車用の道路をコースにした林間コースだったのだ。幅は狭く、曲がりくねり、しかも片側は崖でロープすらはられていない。もし操作を誤って崖に落ちたら深刻な怪我を負う可能性が高い。私は慎重に進もうとしたが、あいにくと斜面はとても状況が悪く、中央が削れていてサイドスリップすらなかなかままならない。それに、斜面が緩すぎるのでサイドスリップでは進まない。かと行って直滑走するとそれなりの速度にはなるし、私の技量ではターンをするには幅が狭く、ブレーキをすると僅かな左右へのブレでも崖に肉薄して恐怖がある。
ほうほうの体でとても長いコースを休み休み降りると、咲花ゲレンデに続くやや傾斜のある斜面がでてきた。林間コースはなおも続き、これを続ければ白樺ゲレンデに帰ることができるのだが、もうすっかりくたびれた私は、林間コースを諦めて急斜面に飛び込み、咲花ゲレンデに生還した。その後、リフトの動く時間まで滑ってから、シャトルバスで宿に帰った。
3日目に滑るかどうか悩んでいた。足の状態は悪くはなっていないものの、ヒザの痛みが完全にないわけではない。サプリメントの効果はわからない。そして前日の傾斜の厳しいところを滑ったときのトゥと土踏まずの痛みも気になる。旅行会社のプランでは3日目のリフト券はついていないので、自分で買う必要がある。3日目は午前中に3時間ぐらい滑って帰って来れるぐらいのスケジュールで帰りの新幹線を予約している。午前券は4200円、もし滑れないとなるとこの金額は痛い。しかし、都内から日帰りでガーラ湯沢に滑りに行くのにも13000円ぐらいかかることを考えると、やはり短時間でも滑るという経験はしておきたい。4人のうち、体力がまだ残っている私を含む3人で午前中に滑りに行った。なんでも、中腹にあるパノラマコースが中級者向けだが雪質もよく幅も広く滑りやすいという。
ゲレンデに行き、まずショートリフトに上がって中級者コースを一本滑ってから考えることにした。ここで足が痛むようであれば上に上がることはできない。結果は悪くなかった。どうやら3日目の雪質は悪くなく、かつ圧雪車が走ったらしく整地されていてバンプは消えていた。これなら滑ることができる。
そして気がついたのだが、どうも昨日の足の痛みは、バインディングを限界まできつく締めすぎたのが問題だったようだ。外れない程度に締めれば痛みはなかった。
そしてリフトにのってパノラマコースに向かった。途中、とても長いリフトがあるので、スノーボードでは足が痛くなるだろうと危惧していたところ、なんとセーフティバーに足を乗せる棒がついていたので、とても楽だった。すべてのリフトにこれがついていてほしい。上に上がれば上がるほど雪質がよくなっていくようであった。
パノラマコースはたしかによかった。雪質はよく、しっかりと圧雪されていて、しかも圧倒的に広い。他人の存在を気にする必要がないほど広い。傾斜はある程度あったが、雪質と広さと人口密度の低さのために、圧倒的に滑りやすかった。しかし、この傾斜ではまだスイッチスタンスでターンができないようだ。そして、どうもヒールエッジが相対的に下手になっているらしい。トゥエッジは安定するのだが、ヒールエッジの状態で、斜面の一部に存在するバンプに衝突すると衝撃に耐えきれずに転んでしまう。そして、速度が出るとヒールエッジのターンはターンと言うよりはむしろブレーキに近くなってしまう。始めたばかりはトゥエッジが極めて難しく感じたのに、すっかり逆転してしまった。次にレッスンを受けるときの課題にしよう。
前回、今回と他人と滑ってみた感じたのは、私はなかなかよいウェアを使っているらしいということだ。前回はあいにくの雨で、一本しか滑っていないのに安物のグローブを使っている人たちはグローブが完全に浸水して気持ちが悪いと言っていたが、ゴアテックスのグローブを使っている私は何の問題もなかった。そして、ウェアも表面から見ると体重のかかる尻部分に水が浸水しているように見える。私のウェアは全く問題がなかった。またみな暑さを訴え、ウェアの前のファスナーを開けたりしていたが、私は今シーズン中に、ゴアテックスのウェアを脱ぎたいと思ったことは一度もない。そもそも私のウェアの構造は横にファスナーがついていて前をはだけることは無理な作りになっている。少し値段は高かったものの、ゴアテックスのウェアを選んで正解だったようだ。
またプロテクターを買ったのも正解だった。最も役に立っているプロテクターは尻で、つぎに手首だ。ヒザもある程度役に立っている。ヒジについてはよくわからない。受け身を取るのにヒジを積極的に使うことができるようになったぐらいだろうか。ヘルメットは今の所役に立っていない。これはいいことだ。というのもヘルメットが役に立つようなひどい転び方をしていないということだからだ。
さて、時間が11時になり、一人別れて上級者コースに向かった仲間がパノラマコースに帰ってきた。帰宅方法は2つ。リフトにのってゴンドラまで行き、ゴンドラで下山する方法と、自力で滑って下山する方法だ。まだ体力的にも余裕があり、バインディングを締めすぎなければトゥと土踏まずが痛まなくなることを学んだため、自力で滑って下山することにした。
下山は主に初級者から中級者のコースを通るのだが、一箇所だけ上級者コースがあった。傾斜が急なだけでコブはなく幅もかなり広いため、挑戦してみたが、歯が立たなかった。トゥエッジのターンはできるのだが、ヒールエッジのターンがどうしてもできない。しかたなくサイドスリップでゆっくりと降りることにした。雪質がよく、パウダーも十分に積もっていたので、幸いにして安全に降りることができた。スノーボードでよかった。これがスキーならばボーゲンで大変な思いをしながら降りるところだった。上級者コースの傾斜は手強い。今シーズン中にターンできるようになるだろうか。
無事に下山した我々は帰路についた。体力的な問題で滑らなかった仲間と合流し、バスを待つ間近くの飲食店を探そうとしたが、見つからなかったため、そのまま帰宅した。食事付きの宿を取ったのは正解だった。周辺にろくな飲食店がない。
流石に体に負担がかかったので、一週間ほど回復を待ってから次のスノーボードに行くことにする。