本の虫

著者:江添亮
ブログ: http://cpplover.blogspot.jp/
メール: boostcpp@gmail.com
Twitter: https://twitter.com/EzoeRyou
GitHub: https://github.com/EzoeRyou

アマゾンの江添のほしい物リストを著者に送るとブログ記事のネタになる

筆者にブログのネタになる品物を直接送りたい場合、住所をメールで質問してください。

nVidia、GeForceのデータセンターでの利用を禁止する

NVIDIAが規約変更によりGeForceのデータセンター利用を制限。大学などの研究活動にも大ブレーキ - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)

また清水亮がポエムを書いている。困るんだよね、名前の同じ人間にそういうことをされると私まで詩人だと思われてしまう。

nVidiaは確かに邪悪で不自由で存在自体が人道上の罪にあたる極悪企業であり、かのLinuxカーネルの最高開発者であるブリリアント・アッスホールの称号も名高いリーナス・トーバルズにも中指を突き立てられてFから始まるとてもここで書くことができないほどの醜悪極まりない侮辱の四文字言葉で罵られたほどの救いようのない時勢の読めない烏合の衆ではあるが、まさか自らの飯の種であるデータセンターへの利用を禁止するほどの寓話に出てくる金の卵を生む鶏を割くほどの阿呆ではないだろう。どれどれ、この私が直々にソースとやらを検証しことの真偽を確かめてやろう・・・マジじゃねぇか清水亮!

問題となっているのは、nVidiaの物理的な製品であるGeForceとTitanではなく、この製品を利用するためのドライバーのEULA、"License For Customer Use of NVIDIA GeForce Software"だ。

日本国版は以下のようになっている。

2.ライセンスの付与

2.1 付与に関する権利と制限。NVIDIA は本ライセンスをもって、お客様が所有する NVIDIA GeForce または Titan ブランドのハードウェア製品と共に使用するために本ソフトウェアをインストールし、使用する非独占、譲渡不可能のライセンスをお客様に付与します。ただし、以下の制約があります。

2.1.3 制限

データセンターへの導入の禁止。データセンターへの導入の目的では、本ソフトウェアのライセンスは付与されていません。ただし、データセンターにおけるブロックチェーン処理を行うことは許されます。

翻訳ミスかもしれぬので、アメリカ合衆国版も確認すると、以下のようになっている。

http://www.nvidia.com/content/DriverDownload-March2009/licence.php?lang=us&type=GeForce

2. GRANT OF LICENSE

2.1 Rights and Limitations of Grant. NVIDIA hereby grants Customer a non-exclusive, non-transferable license to install and use the SOFTWARE for use with NVIDIA GeForce or Titan branded hardware products owned by Customer, subject to the following:

2.1.3 Limitations.

No Datacenter Deployment. The SOFTWARE is not licensed for datacenter deployment, except that blockchain processing in a datacenter is permitted.

なんと、アメリカ語でも同一の内容で、翻訳のミスではない。この他の部分も念のために読んでみたが、この制約を上書きするような記述は見つけられなかった。

このライセンスはnVidiaのGeForceとTitan用のドライバーをダウンロードするときに同意を求められるもので、ライセンス本文中にもGeForceとTitanと書いてある。このドライバーがなければGeForceとTitanは実質的に使用不可能だ。そのドライバーがデータセンターにデプロイできないとあっては、シリコン製の電力効率の悪い暖房器具をデータセンターに配置するようなもので、何の意味もなくなる。

ブロックチェーンの処理のためであればデータセンターにデプロイできるというのは、その手の計算はAMDのGPUのほうが得意で市場を取っているためだろう。ようするにnVidiaという企業は一度市場シェアを獲得すれば足元を見てあぐらをかいて殿様商売をする邪悪で不自由な企業ということだ。はやく適切な自由市場による淘汰を受けてほしい。

RMSは自由なソフトウェアの定義としてまず第一に、自由ゼロ、「プログラムをいかなる目的においても望みどおりに実行する自由」を掲げた。これが一番最初にあるのは、最も重要だからだ。例えば現実の不自由ソフトウェアは、非エンタープライズ目的に限るとか、1台の物理的なコンピューターに限るとか、自社の提供する物理的なコンピューターに限るとか、様々な不平等で屈辱的で消費者の権利を不当に制限する契約を要求している。そのような不自由ソフトウェアの脅威を受け入れておきながら、今回のnVidiaの契約の妥当性に疑問を示す人間は論理的な思考ができない人間である。