本の虫

著者:江添亮
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超会議2017でマストドンブースの運営スタッフをした

私は江添亮、ドワンゴ社員だ。超会議2017で運営スタッフをした。このブログ記事は個人的なものだ。株式会社ドワンゴの見解ではない。こう書かなければならないのは悲しいことだ。結局、国語教育で存在しない作者の意図を答えさられた人が多いようだ。ちなみに、この文章はマストドンとfactorioがやりたくて仕方がない合間を縫って後ろ髪を引かれながら書いた。もし将来、この文章を使って「作者の意図を答えよ」という問題が出題されたときには、「作者はマストドンとfactorioの中毒者であるが我慢しながらこれを書いた」と答えるのが正解だ。

超会議2017リハーサル

概要 | ニコニコ超会議2017 公式サイト

超会議2017での私の割当は、神エクセル方眼紙で公開された。自由な表計算ソフトウェアであるLibre Officeでみてみると、私はゲームエリアにアサインされていた。

やった。事前に提出した希望通りだ。ああ、入社して苦節3年、ようやく希望通りのアサインが行われた。ハッカソンやら馬車やら焼きそばやらと、私は常に変わった場所に割り当てられていた。それがようやく、ゲームエリアのアナログゲームブースでボードゲームのインストをするスタッフになったのだ。今度の超会議では好きなボドゲのインストができる。

そして、ドワンゴがマストドンのインスタンス、friends.nicoが公開された。そして全てが変わってしまった。

マストドンは面白い。なるほど、マストドンは技術的にはクソだ。しかし面白い。しかも自由だ。マストドンには未来がある。Twitterの時代は終わった。これからはマストドンが圧倒的に流行する。既存の不自由なSNSは滅びる。

そして、超会議開催の直前の土日に、マストドンブースの設営が決定された。これは行くしかない。強引に根回しをしてブースのリアサインをする。ああ、せっかく希望通りのボードゲームのインストスタッフになれたのに。いやしかしこれもマストドンのためだ。

超会議前日、リハーサルのために幕張メッセに行き、マストドンブースを確認する。いかにも急造したらしきブースがぽつねんとある。大きめのディスプレイがあり、friends.nicoのLTLをニコニコ動画風の右から左に流れるコメント形式で流している。

私は引き戸になっているブースの下を改めた。ここがマストドンブースであるならば、当然あるはずだ。人権が、インターネット回線が。あるはずだ。果たしてEthernetポートはあった。ある。人権がある。当日はライブマストドンができるぞ。

マストドンブースの確認と、ユーザー記者の控室などにマストドン体験端末の設置などの雑用をする。あとは超会議のリハーサルの体験だ。

超人スポーツのジャンピング竹馬が面白かった。アマゾンで中国製が2万で売られているので、即座に購入した。届くのが楽しみだ。ただし、これはだいぶ危険なので、プロテクターとヘルメットを用意した上で、受け身の練習もしなければならないと思っている。

そして、マストドン会議に参加した。

本の虫: マストドン会議で技術と自由を語る

マストドン会議ではマストドンの実装とプロトコルの設計がいかにクソか、そして自由の素晴らしさを語った。

マストドンは自由だ。自由は素晴らしい。

TwitterはTwitter社が独占している。そのため、Twitterがお前のアカウントをBANすると言ったならば、お前のアカウントはBANされる。お前の相撲取り画像は肌色成分が多いのでエロ画像だと言われたならば、それはエロ画像だ。Twitterに逆らうことはできない。

マストドンでは誰もがインスタンス(サーバー)を立てられる。あるマストドンの運営が「お前の相撲取り画像は・・・」などと馬鹿なこと言い出したら、そんなインスタンスは使わなければよい。どのインスタンスも機に食わなければ、自分でインスタンスを立てればよい。自由を保証するには拒否できる力が必要だ。

これは政治家や政党にとっても都合がいいだろう。ご存知の通り、アメリカ大統領選挙ではTwitterやFacebookが恣意的な検閲を行い、トランプとヒラリーのどちらかに有利な検閲を行った。マストドンではこういう恐れがなくなる。政党や候補者自らインスタンスを立てればよいのだから。

近々マストドン会議2が行われるらしく、ドワンゴからも2人ほど発表するそうだ。なんとか次も発表枠で潜り込めないか交渉している。

超会議

超会議では、私はひたすらマストドンブースに張り付いてマストドンの宣伝を行った。

マストドンブースは超演奏してみたブースの向かい側で、始終うるさかった。なかでも特に多くかかった音楽は、けものフレンズの主題歌と、逃げるは恥だが役に立つの主題歌だった。

超会議では様々な人間がマストドンブースを訪れた。特に印象深かった人間が何人かいる。

マストドンブースにほぼ張り付いていた人間がいた。マストドンの中毒性を考えればコレは当然のことだ。

マストドンをしていて、しかもプログラミングのできる中学生や高校生がやってきた。私は自由なコンピューターの必要性を説いた。プログラミングをするには自由なコンピューターが最も便利だ。不自由なコンピューターではろくなコードが書けない。第一、不自由なOSはその動作を確認できないし、改造もできない。

ある中学生は、プログラミングに興味があるが、いまは不自由なコンピューターであるスマフォしか持っていないといった。私はぜひとも自由なコンピューターを買い、その上の自由なOSをインスールして、プログラミングを本格的に学べと教えた。その子はママに相談すると言って帰っていった。

お母さん、息子の将来のためにはプログラミングができるべきだ。そのためには自由なコンピューターを使うべきだ。

ある高校生はRaspberry PiにDebianを入れて使っているという。ああ、私が高校生の頃にRaspberry Piがあればなんと良かったことだろうか。今の子どもたちは恵まれすぎている。そんな恵まれた環境で育った子どもたちが社会に出る頃には、我々のような老人プログラマーは皆、戦力外通告を受けることだろう。未来は明るい。

マストドンブースに来た政治家達

重ねて書くが、これは私の個人的なブログであって私が雇用されている会社の見解ではないし、書かれている以上の「作者の心情」とか「作者の意図」を見出してはならない。

さて、超会議ではマストドンブースに二人の政治家が来た。政治家であるという理由だけでわざわざ書くというのは、これから私が主張する内容と矛盾する。しかし彼らは政治家であるために例外的な対応を求めたので、例外的に書いてもいいだろう。

東京都知事の小池百合子

急に、マストドンブースにスーツが近寄ってきて、「都知事の小池百合子がまもなくやってくる」と私に告げた。私は事前に連絡を受けていない。上司に連絡を取ると、「把握している。小池百合子のスケジュールは警備上の理由で秘密である」と告げられた。

やがて、怒涛のように小池百合子とその取り巻き御一行様がやってきた。まるで北朝鮮の総書記の視察を受けているかのようだ。小池百合子の周りをスーツが厳しく取り囲んでいる。その中心に光るように目立つ小池百合子。一触即発のアトモスフィア。スーツのうちの何人かは物理的なペンと物理的な紙のメモ帳を手にして激しく首を縦に振りながら何やら一心不乱に書き込んでいる。上司が小池百合子にマストドンの説明をする。そして、小池百合子が去っていった。まるで嵐がやんで晴れ渡ったかのような安堵感が広がる。

これは文化に対する理解と尊敬がない。超会議は誰であれ身一つでそのへんをフラフラと歩いて楽しむべきだ。実際、有名人が何人もそれと気づかれずにフラフラと周りを歩いているのを私は何度も目撃している。小池百合子の査察を受けている間、そのホールは厳しい警戒態勢になり、乗合馬車なども待機を余儀なくされた。都知事ともなると身辺警護が厳しいのはわかる。それはわかる。しかし、文化への尊重も必要だ。

民進党の枝野幸男

超会議2日目の開始直後、急に、マストドンブースにスーツが2,3人ほど近寄ってきて、「これから・・・のユキオが来る」と私に告げた。はて、一体何のユキオだろう。周りが騒がしくて聞き取れない。重ねて聞くが、やはり「・・・のユキオ」としか聞き取れない。名前よりもその役職のほうが重要だ。私はその名前を知らない可能性のほうが高いのだから。

スーツが去ろうとするので慌てて呼び止めて再度聞くと、今度は、「エダのユキオです。政治家の」と答えた。エダのユキオ・・・、なるほど、助詞の「の」ではなく、民進党の枝野幸男(えだのゆきお)か。

もし枝野幸男本人が何も根回しをせず無名の一般人としてやってきたのならば、私も通常通りマストドンの説明と、マストドンのソフトウェア実装が自由であることの価値を説いただろう。しかし、そのような特別対応を求めるのであれば、やはり私としても上司に連絡をする。

上司からの返事がないまま、スーツが再びやってきた。「今から15分後に枝野幸男が来る」ということを私に告げた。

スーツ曰く、「枝野幸男はマストドンにアカウントを作ることを所望している。いまブースに設置してるコンピューターで枝野幸男のマストドンのアカウントを作ることは可能か?」

可能か? 技術的にはイエス。セキュリティ的にはノー。もちろん答えはノーだ。

自分のアカウント登録は自分の所有するコンピューターで行うべきだ。なにしろ、メールアドレスへのアクセスが必要なのだから。

程なくして枝野幸男本人がマストドンブースにやってきた。物々しい目立つ護衛や取り巻きはいない。上司も間に合う。上司が枝野幸男にマストドンの説明をする。

枝野幸男は文化を理解していた。枝野幸男のマストドンのアカウントの名前は本名ではない。かつ、本業には言及しない。それでいい。自分の管理していないインスタンス経由でマストドンに参加するのであれば、無名の一般人として参加すべきだ。そしてどうでもいいバカなことをつぶやくべきだ。そして、他人も本人の意志を尊重し、わざわざ本業についての質問をぶつけるような無粋なことをするべきではない。民進党の政治家、枝野幸男として意識の高い発言をするのであれば、自分でサーバーを建てるべきだ。なぜならば、自分の管理するサーバーは一番信頼できるからだ。

このブログを書いている今も、枝野幸男はわかる人にだけわかる本名ではない名前で、政治家としてではなく一個人として、マストドンで雑談をしている。このまま続けたいだけ続けて、やめたいときにやめるべきだ。

マストドンの保証する自由は、政党や政治家にも利点がある。なぜならば、自らサーバーを立てて情報を発信することで、マスメディアによる脚色のない一次情報を自ら発信できるからだ。

マストドンでは誰でもインスタンス(サーバー)を建てることができる。どのインスタンスを経由してマストドンに参加しているかを意識する必要はない。TwitterやFacebookのように、サーバーを独占され、唯々諾々と決定に従うしかない不平等で不自由な時代は終わった。これからはマストドンの時代だ。