HoloLensを体験したが10年早かった
MicrosoftのHoloLensが日本でも入手可能になったようだ。さっそく入手した人が身近にいたので体験させてもらったが、結論をいうと、10年早かった。
HoloLensは、一見するとバカバカしいまでに巨大で無骨なサングラスだ。そのレンズに投影することにより、あたかも空間上に物体があるかのように錯覚させることができる。空間上のある場所にウインドウや3Dモデルを設置すると、その場所に固定される。HoloLens装着者は空間に固定された表示物を好きな距離、好きな角度から見ているように錯覚する。
HoloLensがどのように空間を把握しているかというと、主に赤外線による深度センサーを用いて回りの深度を把握しているようだ。それにしても装着者の動きに追随する性能がすばらしく、ズレを一切感じさせない。
HoloLens風のコンピューターの性能が上がれば、通常のコンピューターの補助的に使うのはありではないかと思う。つまり、椅子に座って通常のコンピューターを操作している中で、HoloLensも装着して、周囲に作業中に参照するひつようのあるドキュメントを貼り付けておく。回りを見回すとドキュメントを読むことができる。これの何がいいかというと、物理的なディスプレイがいらないということだ。物理的なディスプレイは物理的な空間を専有する。しかもコンピューターにはディスプレイの枚数分、物理的な出力ポートが必要だ。HoloLens風のディスプレイであれば、これがいらない。
ホロレンズの操作はハンドジェスチャーで行う。しかし、ジェスチャーを正しく認識させるのはなかなか大変だった。それに、VRでさんざん学んだことだが、人間はよほど鍛えていない限り、腕を心臓より高く上げたままの姿勢を長時間続けることはできない生き物である。これは大変に深刻な問題で、筆者は数十年後、VRが普及して普通のコンピューターのディスプレイがVRになった未来の採用面接では、エリートの求職者は体育大体操部出身のマッチョで、面接ではその鍛え上げられた肉体美を披露しつつ、「はい、私はこのようによく体を鍛えているのでVR作業を3時間連続でこなすことができますフンヌー」などと自己アピールをしているのではないかと予想している。
結論から言うと、ハンドジェスチャーは面倒で疲れる。Bluetoothが付いているそうなので、キーボードやマウスを接続することはできるのではないか。将来的には、HTC Viveのように物理的な入力装置を使う方向に進むのではないか。
HoloLensの残念な点としては視野が極めて小さいということだ。目の前に腕を伸ばして両手で長方形を作った程度の視野しかない。しかも、頭に固定したHoloLensがずれるとその視野の長方形が移動してしまう。
HoloLensを体験していると、かつてOculus RiftのDK1を体験した時のことを思い出す。荒削りではあるが未来を感じさせる先進的な技術だ。Oculus Rift DK1は、この2017年の標準では、もはや犬も食わないほどのガラクタに成り下がってしまった。かつ、Oculus VR社の方針は邪悪かつ排他的であり、HTC Viveに性能面でも劣っている負け犬と成り下がってしまった。
もうひとつ思い出すのは、Microsoftは一時期タブレットに注力していたということだ。まだ実用的なタブレットが夢物語の時代に、極めて無骨な弁当箱のような厚さのタブレットを開発していた。結果として、Microsoftはタブレットでは負けたが、HoloLensでも同じことになるのではないかと思う。初期の技術研究には多大な資金を継ぎ込むも、結局競合他社にあっさり負けてしまう、そんな未来が見える。
結局、HoloLensは荒削りな開発評価機という印象を受けた。10年後に期待したい。