新しく買ったバリカンが素晴らしい品質だった
バリカンという言葉の語源は、日本に輸入されたバリカンの製造元の社名、バリカン・エ・マール製作所に由来する。社名がそのまま製品名として普及し、一般名詞化してしまったものだ。
私は頭を定期的に剃る習慣を有していたが、この半年ほど剃髪を怠っていた。その理由は自身の怠惰でもあるのだが、現在使っているバリカンが、もう購入してかれこれ7,8年はたっており、すっかりくたびれてしまったからだ。あのジャストシステムの一太郎に対してヘルプアイコン特許訴訟を起こした悪名高いパナソニックのER510Pというバリカンで、髪の毛を吸引する機能が付いている。買った当初は、まだもう少しまともではあった覚えがあるのだが、今となっては剃り味も悪く、吸引機能も著しく劣化している。
とはいえ、髪は伸びている。髪を伸ばしていいことはひとつもない。髪があると夏暑く、汗フケ臭いの元となり、洗髪も煩わしく、なかなか乾かず、寝癖も尽くし、ヘッドフォンを装備するにも邪魔であるし、メガネをかけるにあたってもみあげがメガネのツルに当たる。およそ機能的と言える利点が一つとしてない。
世の中のコンベンショナル・ウィズダムに染まりきった浅はかで非科学的な人間は、髪は防寒の用に立つとか、頭を強く打ち付けた時あるいは物が頭に強く打ち付けられた時髪があることによって衝撃を吸収し怪我を緩和させる、という機能を挙げる。自分の頭髪を剃って比較実験をせず、また科学的に検証された研究結果を出典として参照することなしにそのような主張を行う。
もし、首をマフラーのごとく2,3回も巻けるほど長い頭髪を有しているのであれば、なるほど防寒の用にも立とうが、大抵の人間はそこまで頭髪を伸ばさない。頭髪による頭部への衝撃の緩和の効果はきわめて小さい。
我々近代的な人間は、防寒用の帽子や、防御用の帽子を発明している。まだ石器すら使わない文明レベルの人間ではないのだから、より強力な機能を提供する方法を用いるべきである。
人間は進化の過程で体毛を薄くしたが、頭髪を失わなかった理由はなぜだろうか。自然淘汰は、生存と生殖に有利な特性をひいきする。頭髪は生存の有利な機能を提供していない。しかし、我々の人間社会を観察するに、頭髪の有無は生殖の機会に大きな影響を与えているのではないか。これを科学的に実証するには、千人ほどの被験者に、頭髪を伸ばした状態と剃り落とした状態で、多数の異性に対して生殖活動を行う交渉を持ちかけさせ、その交渉結果を集計して比較すればよい。残念ながら、筆者はそのような科学的な検証が試みられたかどうかを知らないので、この説はまだ証明できない。
それはさておき、近日、たまたまネット上で以下のようなブログ記事を読んだ。
はてなインターンで優勝して,高級バリカン買った - 人権真骨頂
それによると、フィリップスのQC5580というバリカンが、坊主頭にするのにとても性能がよいということであった。@hitode909氏もおすすめの製品であったので、買ってみることにした。
私が買ったのは、マイナーアップデートがされたと思しきQC5582という型番で1万円もした。ヘルプアイコン特許訴訟を起こしたパナソニックのバリカンは、当時8千円ほど支払った記憶があるので、吸引機能というギミック付きのバリカンに比べてもお高い高級バリカンである。そして吸引機能はない。
買ってからも一週間ほど、髪を剃るのが煩わしく使っていなかったが、今日、意を決して髪を剃ってみた。なるほど、この製品の性能はたしかに素晴らしい。あれだけ長かった髪を一瞬で刈り終えることができ、しかも頭皮への損傷が感じられない。これはとてもよいバリカンだ。1万円の価値はある。
ひとつ疑問点を上げると、このフィリップスのバリカンには刃の角度を変えられるギミックがあるが、この機能の必要性はわからなかった。