Craig WrightがSatoshi Nakamotoだとする証明はない
WiredとGizmodeにより、Craig Wrightなる人物がbitcoinのオリジナルの設計者にして最初の実装者、Satoshi Nakamotoであると報じている。
Bitcoin’s Creator Satoshi Nakamoto Is Probably This Unknown Australian Genius | WIRED
This Australian Says He and His Dead Friend Invented Bitcoin
bitcoinのオリジナルの設計者にして最初の実装者は、当時Satoshi Nakamotoと名乗っていた。一見、日本人のような名前であるが、彼は自らのことを多く語らず、またできるだけ身元の特定に繋がる痕跡は隠していた。当然、国籍はおろか、個人かどうかすらもわからない。彼の書いたコードのコメントはすべて英語で、非英語ネイティブにありがちな文法ミスはみあたらない。また、彼の当時のフォーラムへの500件ほどの投稿を調べると、GMTで5時から11時にかけてほとんど投稿がみられないので、Satoshi Nakamotoはこの間には睡眠をとっていたのではないかと推測されている。この時間帯はJSTに生きる人間の一般的な睡眠の時間帯とは異なっている。
Satoshi Nakamotoの正体には様々な憶測が飛び交い、日本人である京大の望月新一教授や、たまたまSatoshi Nakamotoという名前であるアメリカ人がメディアによって正体であると噂されたりもした。
さて、このCraig Wrightなる人物は、自ら作者であると名乗りでた人物であるが、発言がまるででたらめであると言われている。Bathurst大学で博士号を取ったと自称しているが、大学は否定した。また、彼のブログによる証明というのも、bitcoinの公になっているハッシュ値にすぎず、ブログで提示しているbase64っぽい文字列に至っては、デコードすると単なる平文のブログ本文にもある文字列になるというお粗末さである。
Jean-Paul Sartre, Signing and Significance - Dr. Craig Wright BlogDr. Craig Wright Blog
そもそも最も簡単な照明である、当時Satoshi Nakamotoが使っていた最初のPGP秘密鍵で署名した、「Craig WrightはSatoshi Nakamotoである」というメッセージを出して、少なくともSatoshi Nakamotoが当時使っていたPGP秘密鍵は所有しているという証明をしていない。
よくある詐欺師であり、目的はSatoshi Nakamotoを自称して出資を引き出すためではないかと言われている。
と、ここまでならよくある話だが、何故か今回の話にはおまけがある。bitcoin開発者であり、当時のSatoshi Nakamotoとも対話していて、暗号理論も理解していて証明の真贋も見分けることができるであろうGavinが、Craig Wrightは確かにSatoshi Nakamotoであるとコメントしているのだ。
このため、bitcoin開発者はGavinのコンピューターがハックされた可能性を考慮して、Gavinからコミット権限を取り消す措置をしている。まだGavinからハックされたというコメントはない。
ちなみに、Gavinがハックされたとか詐欺に加担しているのであれば、最も簡単に利益を上げる方法が取られていない。すなわち、「私はサトシだ。今から私の持っているbitcoinを全部売る」と宣言して、bitcoin取引市場に多大な売り注文がやってくると誤認させ、市場を混乱に陥れてbitcoinの価値を下げたところでbitcoinを買い占め、市場が落ち着いた後で売り払うという方法だ。
Satoshi Nakamotoが今更名乗りでても、それ自体は別に興味深くはない。本人の名声とか政治的迫害を別にすれば、Satoshi Nakamotoでなければできない設計や実装は今さら存在しない。ただし、Satoshi Nakamotoのウォレットに入っているbitcoinは莫大であり、市場に放出された場合、大混乱に陥るだろう。
こういった事情により、一概に詐欺とも言いがたい事態となっている。