本の虫

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Sarah Sharp、Linuxカーネルコミュニティの暴力性に嫌気がさして貢献をやめる

Closing a door | The Geekess

ドアは閉められた

この記事は一年もの間、下書きフォルダーに入れてた。いまこそ投稿すべき時。炎上は怖かったので、この問題について触れるのはなるべく避けてきたのだけれど、部屋の中の象を指摘しないのはもやもやする。そういうわけで、公開する。

つまりこういうこと。私はもうLinuxカーネル開発者じゃなくなった。2014年の5月にUSB 3.0ホストコントローラードライバーのメンテナーの座を明け渡したし、2015年の1月には女性向けFOSS推進計画(FOSS Outreach Program for Women)のLinuxカーネル部門とかその他の役職も降りたし、2014年12月6日には、最後のLinuxカーネル開発のプレゼンをした。2015年8月のシアトルでのLinux Plumbers Conferenceへの強力は断った。Linux財団の技術顧問委員の任期もすぐに切れるし、次回に入るつもりはない。

私はできることなら、もう二度とLinuxカーネルのメーリングリストに対してパッチやバグ報告や提案を投げることはない。受信欄には最近のカーネルの不具合がたまっているが、無視する。今やっているユーザースペースのグラフィックの仕事上、カーネルの不具合のパッチを投げる必要があるかもしれないが、カーネルコミュニティのやかましいやり取りに悩まされることを考えると、まず丸一日は躊躇するだろう。

私はもうLinuxカーネルコミュニティの一員とはならない。

この決断は長いこと考えたあげくのことだ。今の立場から降りることは軽々しく行ったのではない。降りたことに対して、長い間罪悪感を感じていた。でも、技術的には尊敬されこそすれ、個人的に尊敬されないようなコミュニティに貢献することなどできるはずがないとようやくわかったのだ。新参にはパッチを送るよう推奨しておきながら、メンテナーはどんな暴言でも吐くことを許されるような人間と関わり合いたくはない。下ネタとホモフォビックジョーク飛ばして何のお咎めもない連中と共同作業などできるはずがない。行動を律する規則なく、また規則を守らせる権力の存在しないコミュニティのなかでは無力だ。

Linuxカーネルコミュニティの技術力は認めている。この世の中で一流のコード品質を維持するほどに成長したプロジェクトだ。文化や習慣の違うメンテナーが膨れ上がるなかで、技術力に注力するということは、Linuxカーネルメンテナーは作業をすすめるために、往々にして愚直で、礼儀知らずで、暴力的になる。トップのLinuxカーネル開発者達は、他人の行動を正すために、たいてい怒鳴りあう。

こういうコミュニケーション方法は私向きではない。技術的に愚直なのはいいとして、人間は尊重しなければならない。技術的にせよ、社会的にせよ、間違いを犯した時は、個人攻撃せずに正すコミュニティでなければならない。我々は皆人間であり、間違いを犯す。そして正す。誰かにいらだち、やりすぎ、謝り、一緒に解決策を考える。

Linuxカーネルコミュニティのコミュニケーション方法はもっと礼儀正しくあるべきだ。メンテナーが不満を抱えているときにコミュニケーションを行うときに、もっと健全な方法を取るべきだ。Linuxカーネルには挑発や愚直を避けるために、もっとメンテナーが必要だ。

残念ながら、Linuxカーネルコミュニティに私が望むような態度の変化は近い将来に起こりそうもない。多くの古参Linuxカーネル開発者は技術的に性格的にも暴力的であるために現在の地位にいる。たとえ直接対面すればいい人であったとしても、彼らは現在のLinuxカーネルのコミュニケーション方法に変化を望んでいない。

つまり、このLinuxカーネルコミュニティにおいては、他のLinuxカーネル開発者の感情的な需要(ストレスを他人に愚直で失礼で暴力的な方法でぶつけて発散させること)が、私の感情的な需要(人間として尊重されること、罵倒されないこと)より優先されるということだ。このコミュニティでは基本的人権の尊重より既存のメンテナーを優先する強力な政治力が働いている。

この記事はカーネル開発者に向けて書いているわけではない。誰か特定の人間のせいにしているのではない。この記事は、私がもうその一員とならないコミュニティに対する失望だ。コミュニティをより良くするために私が立ち上がるたびに賛同してくれた人たちに申し訳なく思う。というのも、私はLinuxカーネルコミュニティの変化を諦めたからだ。文化の変遷は遅く、難しい作業だ。私はもはや文化の変遷を先導する一員にはなれないということだ。

Linuxカーネルコミュニティがいずれ変わることを願っている。その変化の片鱗には私がいる。ドキュメント、チュートリアル、そして私が始めた女性向けカーネルインターンシップ制度は、私がいなくても成長していくだろう。いずれの日か、環境が良くなれば、私は戻るかもしれない。私にはまだ時間がある。私は待てる。その間、他に私の活躍できる、もっと友好的なオープンソースコミュニティがいくつもあるというものだ。

あるドアが閉まれば、また別のドアが開く。しかし、我々は往々にして閉まってしまったドアのことを残念がり、新たに開かれたドアには目もくれない。

Alecander Graham Bell

ところで、HackerNewsではUSBスタックの不具合を修正するためにカーネルメンテナーとやり取りしたが、そのメンテナーがあまりにもやる気がなかったため諦めた体験談が書き込まれている。サラ・シャープもUSBスタックのメンテナーであった。これを受けて、ひょっとしたらLinuxカーネルの特定の領域のメンテナーとその文化がクソなのではないかという推測がされている。特に、既存のコードの保守が主な作業になると、自然と担当者の考え方まで保守的になるのではないかなどと議論されている。

Sigh. Story time. A long time ago (2006,7,8?) before Sarah took over USB develo... | Hacker News

また、有名なカーネル開発者のMatthew Garrettが、この記事を受けて、LinuxカーネルにBSD風のsecurelevelインターフェースを加えたforkを発表している。

mjg59 | Going my own way