本の虫

著者:江添亮
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結婚することになった

突然だが、結婚をすることになった。年内に籍を入れることを考えている。あまりに唐突に決まったため、周囲からも本人も、ノリで結婚することになったと言っている。

「契約結婚しましょう」

と女は言った。その言葉は江添に対して発せられたようではあるが、どうにも意図が曖昧である。女は江添に対して結婚を申し込んでいるようにも聞こえ、あるいは、江添は誰かと結婚をすべきであると言っているようにも聞こえる。前者の解釈が誤りである場合、江添は大変なうぬぼれをしたことになる。前者かどうかを確かめるには、ここでわざとらしいにやけ顔を作り、おどけた声で、「私と?」などと答えればよいだろう。たとえ解釈間違いであったとしても、うぬぼれやを気取った冗談で済む対応だ。

ここは筆者の住むシェアハウスのリビングであり、たまたま何人かの男女が集まって、軽く酒を飲みながら話をしている。となりでは、いかにも恋愛経験の豊富そうな大人の女が、たまたまその場に居合わせた若いイケメンを口説いていた。その口説き方は極めて滑稽で、まるでマンガにでも出てきそうな光景である。この大人の女は、相当に退屈だとみえる。口説かれているイケメンは、やんわりと断りながら、しかし話は続けているようだ。まことに精神的にもイケメンである。

場の雰囲気は、恋愛観や結婚観を語り合う方向に進んでいたので、そういう言葉が出てくることは自然な流れである。江添には恋愛というものがよくわからない。無論、これまで恋愛の経験がないまま歳のみいたずらに取ってしまったということもあるだろう。しかし、やはり恋愛が理解できないために、恋愛経験がなかったのではないかとも思う。

まず江添には、誰か特定の人を好きになるということがよくわからない。一体、人はどうしてある個人を好きになるのだろうか。容姿だろうか、金だろうか、社会的地位だろうか、はたまた価値観の一致だろうか。

江添には容姿の良し悪しがうまく評価できない。確かに、不健康的にやせ細っていたり太っていたりする人間は容姿が劣っているとは思う。しかし、容姿が優れているとはどういうことをいうのだろうか。世間の評価を参考にすると、まず年齢が若く、痩せていて、髪が長いというのが、美男美女に共通する項目のようだ。美女の場合、厚化粧という項目も加わる。また、画像の場合は、多くの修正を加えている画像が、容姿が優れていると評価されているようだ。

仮に容姿が優れていたとして、それがどうして恋愛や結婚につながるのであろうか。容姿というものは経年劣化するものであり、容姿を元に相手を選ぶとすれば、数年おきに相手を取り替えねばならないだろう。

金目当てというのは、まったく理解できない。社会的地位もそうだ。価値観の一致は一番理解できるが、それでも他人の価値観が完全に一致するわけがない。

ただし、結婚と育児となると話は別だ。もし育児をするならば、やはり社会制度が結婚を前提に設計されている都合上、結婚しておいたほうが何かと便利であろう。また、育児には年齢という生物学的な限界がある。そのため、10代後半から20代のうちに結婚出産育児をしておくべきだろう。40や50になって育児というのは極めて難しいように思われる。そのため、結婚をもしするのであれば、そろそろ年齢的に限界だろう。

と、恋愛観や結婚観について問われて答えていたところでの、この言葉だ。

「契約結婚しましょう」

素知らぬ顔で言われたので、特に江添に対して話したわけでもないように思う。

そもそも契約結婚とは何か。甲と乙は結婚をする、から始まり、期間や離婚の条件まで事前に契約によって取り決めておくことだろうか。

「そうです」

この女は、シェアハウス界隈の人間で、自身もやはり、とあるシェアハウスに住んでいる女だ。かなりのフェミニストで個人主義者だ。江添が東京に出てきた直後からシェアハウス界隈のつながりで身近にいた人間ではある。

ともかく、その日はこの女の考える理想の契約結婚について話をして終わった。女は、恋愛とか人を好きになるということは分からず、結婚のリスクも最小化したいなどという考えを持っているようであった。。江添に対しての話だったようにも解釈できるし、単に契約して結婚するという一般的な価値観の話のようにも解釈できる、なんとも曖昧な話であった。

後日、2kgのサーロインブロックが贈られてきたので、大いに肉を食べる会を催したのだが、満足に肉を食べて参加者もほぼ帰った後で、やはりまた同じ話になった。

「契約結婚してください」

と言って、女は頭を下げた。その場には男二人女二人しかおらず、もう一人の男に向かって言ったのではないことは明白である。江添は特に何の考えも持たなかった。断るほどの悪条件もなさそうではあるが、受けるほどの好条件も見当たらない。

その場にいたもう一人の女が、二人の間に取り行って仲人となり、質問をして、条件をまとめていった。その結果、お互い、特に相手に求める要求もなく、またこれだけは許せない条件というのも、私はタバコで、相手は大麻(何でも、昔の男が大麻を吸っていたことが判明したので別れたのがトラウマなのだとか)だ。

お互い個人主義で、たとえ結婚相手であろうとも、自分の時間や環境を犠牲にしたくはないという考え方なので、自分の権利を守るために相互に干渉することがなく、案外うまく行くのかもしれないとも思った。

結婚しても、お互いにシェアハウス暮らしが好きなので、しばらくはたまに会うぐらいで同居しないだろうし、お互いに金銭的、精神的に独立しているので、いい相手に恵まれたのかもしれない。