本の虫

著者:江添亮
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金の使い道が分からない

「毎日のように飲みに行っている」と男は我々に語った。我々は土曜日を丸一日エンジニアボードゲーム会@本郷に費やした後、会場の近くの中華料理屋で食事をしているのであった。

「毎日のように飲みに行っている。だいたい終電を逃してタクシーで帰る」

よく金が続くものだ。

「結局、タクシー代を考えると、都内に住んだほうがいいので、都内に住んでいる。しかし、家など寝るためにあるようなものなので、いらないのではないか。最近は荷物をどんどん減らしている」

「貯金がないし、たまらない。どうやって貯金をしたらいいのだろう」

贅沢な悩みだ。私と、その場にいたある女は、金の使いどころがなくて貯金額のみむなしく増えていく一方だというのに。

毎月の給与所得というものが発生するようになって早一年、最初こそ、東京に身ひとつで引っ越してきたばかりであり、色々と物入りであったが、基本的な日用品を買い揃えてしまえば、後はなにも要らなくなってしまった。一体、世間の人は金をなにに使っているのだろうか。

酒に金を使う種類の人間がいる。外で飲むと高くつく。これは、飲み屋には酒と食材の他にも、場所や建物や人員が必要なためである。また、終電を逃して家に帰りたければタクシー代もかかる。私は飲み歩きたいとは思わない。まず、飲み屋というものは大抵がタバコという薬物に中毒している救いようのない人間の多い場所であり、そのような場所に身を置きたくはない。また、酒も、相手が入ればこそ飲んでも楽しいが、一人寂しく飲みたいとは思わない。また、東京の飯はまずいので、食べ歩きたいとも思わない。

旅はどうか。旅には金がかかる。新幹線や飛行機はそれなりの値段であるし、宿も高い。私は旅に出たいとは、今のところ思っていない。特に見たい名所もないし、温泉というものにも興味がない。広い湯船につかりたければ、銭湯に行けばいい。

車やバイクにも興味がない。

ビデオゲームはどうか。私にとって、ビデオゲームとはマウスとキーボードで行うものである。当然、十分な性能のCPUとGPUとメモリ容量と高速なストレージを備えたコンピューターでなければならぬ。これを用意するには、数十万円かかる。それでもたったの数十万円だ。一度PCを組んでしまえば、一年以上使えるので、やはり月あたり数万円の出費でしかない。それに、今のところ、あまりおもしろそうなゲームがないため、数年はビデオゲームを控えるつもりである。

ボードゲームはどうか。ボードゲームは高い。僅かなコンポーネントの、実質ルールを書いた紙切れだけのようなボードゲームが数千円する。とはいえ、どんなに高いものでも、せいぜい一万円程度であり、一度買ってしまえば何年も遊べる。それを考えれば、それほど高くはない。MTGや遊戯王のような、高くつくゲームもあるが、私はデッキ構築ゲームにはそれほど興味がない。

最近は、ボルダリングをしている。ボルダリングは高くつくかというと、それほどでもない。ボルダリングジムの使用料は、一回あたり二千円弱だからだ。ボルダリング用の靴は高いが、一年以上使えることを考えると、やはりそれほどでもない。

妻子でもいれば色々と物入りなのかもしれぬが、あいにくと結婚とは縁遠いようだ。

最近、月一で江添ボドゲ会を開いているが、菓子や飲み物やビールを用意したり、カレーを5リットル作ったりするのに、それなりに金がかかる。とはいえそれほどでもない。

ただ、妖怪ハウスの賃貸契約が3年なので、来年以降存在しているかどうか怪しい。ボドゲ会のために、都内に広いリビングを備えた物件を借りるのにはそれなりに金がかかる。とりあえずはまだ先の話だ。

そういえば、このエンジニアボードゲーム会の後の食事の席で、コミット申請書とかコンパイル申請書などと言った闇の話を聞いたのだが、それはまたの機会に。