本の虫

著者:江添亮
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シニアエンジニアによるガラケー大戦回顧録に参加した

シニアエンジニアによるガラケー大戦回顧録 : ATNDに参加した。

この会合の主旨としては、当時の邪悪で不自由極まりないガラケーの開発姿勢が、如何に悲惨で惨めで肥溜めの中の蛭のようなものだったかを、非公開の会合で語ろうというものだ

ガラケーの開発では、技術的に誤っている手法が実に多く使われていた。なるほど、不自由で貧弱なガラケーの実装が規格準拠しておらずバグだらけだったこともあろう。それにしても、ガラケーとは関係がないサーバーの中だけで完結する場所におけるクソもあった。何故そんなことになってしまったのか。

理由は、情報が公に出せず、したがって共有されなかったことだ。情報が共有されないため、表立って議論や相談が出来ない。その状態でかろうじて見つけたちっぽけな情報を元に、技術的に極めて劣っていながらも、何とか動くものを作り出していた。そして、その動くものを、正しいやり方だと勘違いしていたのだ。

なぜそんな馬鹿げた自体を引き起こしたのか。なぜ情報が表に出せなかったのか。

NDA(Non-Disclosure Agreement)である。ガラケー各社は、開発者に対して極めて厳しい、マヌケなNDAを強いていた。そのNDAの強烈なことには、当時のガラケー開発者をして、「今のiPhoneのNDAなんてなきに等しい」と言わしめるほどであったそうだ。

NDAがあるための情報を表に出せない。情報を共有できない。表立って技術を議論できない。しかし、我々は表に出ている情報からしか学べない。

その結果起こったのが、あのガラケーの惨事だ。バッドノウハウをノウハウだと勘違いして、クソみたいな実装のガラケー向けサービスを乱立させ、黒船たるiPhoneやAndroid上陸で沈んでいったガラケー開発会社だ。

その当時、ke-tai.orgを運営していたketaiorg(松井 健太郎) (ketaiorg)氏も、会合に参加していた。氏が自分がke-tai.orgを運営していたと発言すると、その場にいた元ガラケーエンジニア達は、一斉に市の方に向き直って頭を下げた。これはいったいどういうことか。

ke-tai.orgは、NDAに縛られて情報の共有も技術の議論もない暗黒のガラケー開発時代に、様々なガラケーの情報をまとめて掲載していたWebサイトであった。当時のガラケー開発者で、ke-tai.orgのお世話にならなかったものはないほどであったという。

ke-tai.orgで提供していた、ガラケーの全機種の型番リストといった、筆者としては実につまらないように思える情報ですら、極めて貴重でありがたいものであったと、会合の参加者は口々に語った。何でも、そのような情報は、当時何十万円も出さなければ購入できないものであったという。

なぜ、氏はke-tai.orgを運営できたのか。どうやら、氏は当時フリーランスとして働いていて、NDAを結ばなければならない部分とは、直接関わっていなかったのだという。

結局、真にエンジニアに役立つのは、このような公の情報だ。表に出ている情報だ。NDAを結んで得られるクソの搾りカスのようなドキュメントが、サポートが(もしあればの話だが)、いったい何の役に立ったというのか。必要なのは公に情報を出せることだ。知識を共有し、議論できることだ。それができないものに、それを邪悪にも制限するものに、将来はない!

筆者これを聞く。今の世の中に、未だにガラケー時代と変わらぬ鼻クソのようなNDAを結ばなければ、どんなプログラミング言語を使っているかすらわからないようなチンカスプラットフォームがあるという。どこのアホタレとは言わないが、早く行いを改めることを勧める。さもなくば、ガラケーと同じ道をたどるであろう。完全に自業自得であり、筆者は別にカワイソーとは思わん。

当日のガラケーエンジニア達の間でも答えの出ない疑問がある。なぜそんなクソのようなガラケー業界が当時やっていけたのか。この疑問には答えることができる。「金になったから」だ。では、何故金になったのか。この疑問にも答えることができる。「ガラケー利用者が金を出したから」だ。なぜ金を出したのか。これには、参加者一同首をひねるばかりで、誰一人として答えを出せなかった。

当日、会合で出た話は、なかなか公に出せない話ばかりであった。また、筆者としても、記録を取っていないので、詳細を思い出すことはできない。しかし、この話は埋もれさせてはならない。過去の過ちは、公にして、再び同じ轍を踏ませない戒めとしなければならない。そのためにはどうすればいいのか。このような話を持っている人は多いが、なかなか公に話してはくれまい。

思うに、もっと大きな勉強会を開くというのはどうか。100人規模の勉強会を開催すれば、その規模であれば話してもいいと表に現れる元ガラケーエンジニアもいるのではないか。しかし、100人規模の勉強会というのは、甚だ大規模である。100人入れる部屋を確保し、プロジェクターや電源やWiFiを完備した上で、できればインターネット上に動画のストリーミング配信をする機材も欲しい。ああ、そんな都合のいい部屋がどこかにあればいいのだが。

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この記事はドワンゴ勤務中に書かれた。

ところで、歌舞伎座タワーに入っているドワンゴは、108人入れるセミナールームを持っていて、勉強会を積極的に開催している。筆者も、これからはC++の勉強会を積極的に開催しようと思う。そのはじめに、まず6月28日に勉強会を開催する。

本の虫: ドワンゴC++勉強会 #1の開催告知

ドワンゴC++勉強会 #1 - connpass

残念ながら、現時点で定員を上回る応募がされている。C++勉強会の需要はあるようなので、今後も積極的に開催していきたい。

ドワンゴは本物のC++プログラマーを募集しています。

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