本の虫

著者:江添亮
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C++標準化委員会の文書のレビュー: N5410-N5419

N4510: Minimal incomplete type support for standard containers, revision 4

vector, list, forward_listに対して、非完全形を要素型に認める提案。

以下のようなコードが書けるようになる。

struct Node
{
    std::vector< Node > nodes ;
    // ...
} ;

クラスは定義の終了を持って完全形となるので、この場合のvectorに渡すNode型は不完全型である。つまり、sizeofが取れないなどの問題がある。しかし、不完全型をサポートする実装は可能であり、このコードは実装によって通ったり通らなかったりしていた。

上記のパターンのコードは利用価値があることから、これを認める提案。まず、最も無難なコンテナーに限って認める。

N4511: Adding [nothrow-]swappable traits (Revision 1)

<type_traits>にstd::is_swappable<T>, std::is_swappable_with<T, U>, std::is_nothrow_swappable<T>, std::is_nothrow_swappable_with<T, U>を追加する提案。

N4512: Multidimensional bounds, offset and array_view, revision 7

連続したストレージを多次元配列に見せかけるラッパーライブラリ、array_viewの提案。前回の提案N4494に比べて、細かな変更が加えられている。

[PDF注意] N4513: Technical Specification for C++ Extensions for Transactional Memory

トランザクショナルメモリーTSのドラフト

[PDF注意] N4514: Technical Specification for C++ Extensions for Transactional Memory

トランザクショナルメモリーTS。内容はドラフトと同じ。

N4515: Editor's Report: Technical Specification for C++ Extensions for Transactional Memory

トランザクショナルメモリーの編集者による変更点の報告書。

[PDF注意] N4516: http://www.open-std.org/jtc1/sc22/wg21/docs/papers/2015/n4516.pdf

ライブラリベースの型安全なunionライブラリ、variantの提案。boost.variantの機能削減版といったところだ。

なお、このvariantは空状態を許容する。理由は、別の型のオブジェクトを代入された時に、元の型のオブジェクトを破棄した後で、代入に失敗した時の状態をどうするのかと考えると、空の状態を許容する設計になったそうだ。

[PDF注意] N4517: Record of Response: National Body Comments ISO/IEC PDTS 19841

トランザクショナルメモリーTSに対するNBコメントに対する返答。

N4518: Make exception-specifications be part of the type system, version 2

例外指定を型の一部に含める提案。現状では、例外指定はポインター同士の代入を制限すると規定されている。しかし、ポインターのポインターを介せば、例外の異なる関数へのポインター型が相互に代入できてしまう。

たとえば、core issue 92は以下のようなコードを問題視している。

void (*p)() throw(int);
void (**pp)() throw() = &p;   // not currently an error

これに対し、対応はしないと結論したものの、やはりなにかおかしい。

N4519: Source-Code Information Capture

ソースファイルの情報を取得できるリフレクションライブラリの提案、__LINE__などのようなプリプロセッサーで取得していた情報が、まともな方法で取得できるようになる。

#include <experimantal/source_location>

int main()
{
    auto sl = std::experimental::source_location::current() ;

    std::cout
            << sl.line() << '\n'
            << sl.column() << '\n'
            << sl.file_name() << '\n'
            << sl.function_name() << std::endl ;
}

source_location::currentは、呼び出した場所のsource_locationオブジェクトを返すconstexpr staticメンバー関数である。

なお、source_location::currentをデフォルト実引数で呼び出した場合、呼び出し元の情報が得られる。


void logger( std::experimantal::source_location sl = std::experimental::source_location::current() )
{
    // slにはlogger関数を呼び出した元の情報が入る。
}

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